なぜ同じコードなのに響きが違う?経験から語る「ボイシング」と「転回形」の整理術

同じコードなのに全然違う響き?DTMや演奏で差がつくボイシングと転回形の仕組みを解説する画像

**この記事は私が19年の音楽制作経験に基づいて、初心者の方の失敗を減らすために執筆しました**

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DTMで楽曲を制作・リアレンジしたり、吹奏楽で編成を見直す際に「コード進行は真似したり、合っているはずなのに、プロの曲と比べるとなぜか響きが違う気がする……」と感じる方は多いのではないでしょうか。

結論から言えば、それは「転回形」や「ボイシング」という観点から、「音の運び方」を意識できていないことが原因であることが多いです。

ここで「なるほど!」と思った方は、ぜひ最後までこの記事をご覧ください!

コード進行や調を理解し、自分なりにアレンジできるようになるまで、多くのことを勉強する必要があり大変だったと思います。しかし、それはあくまで「基礎」の段階であり、その先の「応用」ができなければ、楽曲のクオリティをもう一段引き上げることはできないと言い切ることができます。

この「コード進行」は、音楽の三大要素の一つである「ハーモニー」を構成する要素の1つです。 筆者も過去に経験がありますが、この三大要素の作り込みがおろそかになると、他の部分をどれだけ作り込んでも、完成後に俯瞰して聴いたときに「何かいまいちだな……」感じることになります。

そこで今回は、理想の響きを作るための「和音の転回形」と「ボイシング」について、図や実際の音源を使用しながら徹底的に解説します。

本記事の内容は、のちに学ぶ「ペダルトーン」など、さらに高度な理論を支える重要な土台となりますので、しっかりマスターして活かしていきましょう!

それでは本題に入ります!

コード(和音)を勉強する際に、まず最初に覚えるのが「ド・ミ・ソ」という形ですよね。しっかり勉強している方は、これは「1度・3度・5度」という関係で構成されているということもご存じかと思います。

実は、この「1度・3度・5度」の順で並んだ和音は、正確には「基本形」と呼ばれています。
3和音は文字通り「3つの音」で構成されていますので、この基本形を基準として、どの度数を一番低い音「ルート音(根音)」に持ってくるかによって、全部で3つの形(基本形・第1転回形・第2転回形)があります。

では実際どのように表記されるか、どのような響きの違いがあるかを以下の表で確認していきましょう。

Cメジャーコード(ドミソ)の基本形の五線譜図解
【基本形】 根音が一番下にある、基本の形。
基本形の響き
Cメジャーコードの第1転回形の五線譜図解(ミソド)
【第1転回形】 第3音を最低音にした配置。
第一転回系の響き
Cメジャーコードの第2転回形の五線譜図解(ソドミ)
【第2転回形】 第5音を最低音にした配置。
第二転回系の響き

同じ和音(コード)でも、並べ方ひとつで全然違った響きだと感じることができたかと思います。その「聴感上の感覚の違い」はコードを構成する上では理論と同じくらい大切になってくるので、理論と感覚の両方で理解することが大切です。

この章で解説したのは、次の章を深く理解するための「転回形」の基礎知識です。この知識が本当の意味で活きてくるのは、実際のコード進行の中で使ったときになります。

では、転回形を使うことで楽曲全体にどのような変化が生まれるのか。次の章から「3和音」と「4和音」の具体的なパターン別に、その違いを徹底比較していきましょう!

ではまず、3和音進行の違いを確認していきます。早速ですが図と音源を確認してみましょう!

3和音(C-Am-F-G)をすべて基本形のみで配置したコード進行図
基本形のみで構成されたコード進行
基本形のコード進行の響き方
転回形を活用して滑らかに繋いだC-Am-F-Gのコード進行図
転回を工夫した場合のコード進行
転回を工夫した場合の響き方

全然響きが違いますよね!

「基本形のみ」の方は音の跳躍が多く、やや分散的に聞こえるのに比べ、「転回を工夫した形」の方は音の跳躍が少なくコンパクトにまとまった印象を得ることができます。

これはどちらが音楽的に「良い」という話ではありませんが「どのような違いがあるか」「印象を受けたか」を覚え、その楽曲に合った選択を出来ることが大切です。

では次に4和音のコード進行での違いを確認していきます。4和音の進行では3和音の進行より顕著に違いが感じられると思いますので、早速ですが確認していきましょう!

4和音(セブンス等)の基本形のみで構成された進行図
基本形のみで構成された4和音のコード進行
基本形のみの4和音進行の響き方
転回形を工夫した4和音(C7-Am7-Fsus2-G7)の進行図
転回を工夫した場合の4和音のコード進行
転回を工夫した場合の4和音進行の響き方

こちらも3和音の進行と同様に「基本形のみ」の方は音の跳躍が多く、やや分散的に聞こえるのに比べ、「転回を工夫した形」の方は音の跳躍が少なくコンパクトにまとまった印象を得ることができますが、その違いがより顕著になりました。

実は和音には、音を5個、6個と積み上げるさらに複雑なものもあります。音の数が増えれば増えるほど、この「転回」による響きの違いがより大きくなっていきます。

先程も記載しましたが、これらに音楽的な「正解」はありません。大切なのは、それぞれの響きの特徴を知り、自分の楽曲やアレンジにどちらが合うかを「意図して選択できること」です。今回聴き比べた感覚を、ぜひ引き出しの一つとして持っておきましょう!

和音の「転回」を意識すべき理由は、単に響きが変わるからと言うことだけではありません。それと同じくらい大切なのが「楽器奏者が実際に演奏できるかどうか」という点です。

昔から「人間が無理なく演奏できるか」と言う点は、音楽制作やアレンジにおいて重要な要素の一つとして考えられてきました。「昔は」と記載したのは、現代ではシンセサイザーを中心としたEDMなどの流行やそのジャンルの進化が早いことにより、シンセがメインの楽曲であれば、機械にしかできない斬新で複雑な音の移動も「斬新な考え方」として受け入れられ始めているからです。

しかし、バンドや管弦楽などの「生楽器」がメインの楽曲では、今でもプレイヤーの演奏性が最終的なクオリティを左右します。 例えば、単音を担うブラス(管楽器)やストリングスの各パートが「無理な跳躍なく美しいラインを描けているか、または欲しい帯域をカバーしているか、欲しい響きを出せているか」と言う点やそれに加えて、ピアノやギターといった和音楽器において「人間の指の構造で押さえられる配置になっているか」と言う点です。

特にDTMの領域では、楽器演奏の知識が無くても音を並べるだけで楽曲を制作することは可能です。だからこそ、各楽器の特性に合わせた「自然なフレーズや響き」を作れるかどうかが、完成後の「人間が演奏することの自然さ」や「質感」に大きく影響します。そのためにも、転回形は必ずマスターしておきたい基礎知識と言うことです。


次の章からは「ボイシング」を解説していきます。転回は「どの度数の音を根音にするか」という考え方から、音の跳躍や響きについて考えるものでしたが「ボイシング」は「和音の配置」についての考え方です。

このボイシングを学ぶことで、響きの美しさだけでなく「複雑な和音をどう整理して構成すべきか」という点や、「ペダルトーン」「クリシェ」といった一歩上のアレンジテクニックにまで応用できる知識が身につきます。

ボイシングは「和音の配置」の話ですので、ここまでの「転回形」の知識が土台として非常に重要になります。転回について「まだ少し自信がないな」と感じる方は、ぜひ一度前の章に戻って、しっかり理解を深めてから読み進めてください。

それでは、「ボイシング」を解説していきます!

「ボイシング」とは「オクターブにどのように音を分散させるか」という「音の配置」の考え方です。

具体的には、先ほど挙げたブラスやストリングスなどの単音楽器で「各楽器にどのような音を担当させるか」と言う点や「音数を多く使用する和音をどうすれば綺麗に聞かせることができるか」ピアノやギターなどの同時に複数音を演奏できる楽器では「どのような響きを得ることができるか」などを考慮する際に必要となる考え方です。

ボイシングは以下の様な形で多く2個の分類があります。

  • クローズボイシング:各音の間隔が狭い(近い)配置になっている
  • オープンボイシング:各音の間隔が広い(遠い)配置になっている

まずは、その違いを直感的に理解していただくために「極端な例」を用意しました。実際の図と音源で、ボイシングによる響きの変化を確認していきましょう!

1オクターブ内に音が密集した極端なクローズ・ボイシングの図解
極端なクローズボイシングの例
極端なクローズボイシングの響き
2オクターブ以上に跨る極端なオープン・ボイシングの図解
極端なオープンボイシングの例
極端なオープンボイシングの響き

これはどちらも「ドレミファソラシド」の8音を同時に鳴らしている楽譜と音源になりますが、まずは楽譜の方から見ていきましょう

クローズボイシングの方は音の配置の間隔が狭くなっていますね!それに比べて、オープンボイシングの方は低音から高音まで音の間隔がかなり広くなっています。

また、音の響きも、クローズボイシングの方は不協和音のように聞こえますが、オープンボイシングは「複雑な和音」の一言で片付ければ、聴けなくもない響き方になっています。不思議ですよね!

複雑な和音には基本「1度・3度・5度・7度」の4音以外にも「テンションノート」と呼ばれる「9度・11度・13度」の音が加わることになります。また、「テンションノート」はそれぞれ#/♭することもありますから、複雑な和音を綺麗に聞かせるためにはこの「ボイシング」と言われる考え方が必須になってくる訳です。

それでは、実際の4和音でのコード進行で「クローズボイシング」と「オープンボイシング」の違いを確認していきましょう!

C7-Am7-Fsus2-G7のクローズドボイシングによるコード進行図
4和音のクローズボイシングのコード進行の配置の間隔
4和音のクローズボイシングのコード進行の響き方
C7-Am7-Fsus2-G7のオープンボイシングによるコード進行図
4和音のオープンボイシングのコード進行の配置の間隔
4和音のオープンボイシングのコード進行の響き方

これもまた、全然響きが違いますね!

クローズドボイシングは「密度が高く、まとまった音の壁がある様に感じる」のに対して、オープンボイシング方は「分散的で空間が広いことから、少し浮遊感がある様な印象」になっています。

何度も記載しますが、これらに音楽的な「正解」はありません。大切なのは、それぞれの響きの特徴を知り、自分の楽曲やアレンジにどちらが合うかを「意図して選択できること」です。今回聴き比べた感覚を、ぜひ引き出しの一つとして持っておきましょう!

今回は「和音の転回形」と「ボイシング」について徹底的に解説していきました!

本記事を最後まで読んでいただけたかたは「転回」と「ボイシング」が音楽に対してどのような考え方であるか、加えて、なぜそれを考えなくてはならないのかを理解できたかと思います。

また、筆者は転回やボイシングの説明の際に「○○の様な感じの響きで」などの表現を使い説明してきましたが、これはあくまで筆者の感覚での話です。

よく「マイナー和音は暗い響き、悲しい響き」と説明されているのを見たことがあるかと思いますが、筆者はこの説明をあまり良く思っていません。なぜなら、あくまで感覚は個人によって様々ですし、楽曲での使い方や和音の構成の仕方、本記事で説明した「転回」や「ボイシング」によっては暗く聞こえないからです。

ですので、本記事で学んだ知識は「こうすると、次にこれができる」という「機能を判断するためのツール」として活用し、実際の響きに対しては「自分が直感的にどう感じたか」という感性を何よりも大切にしてください!

また、本記事では当たり前のように「コードの表記」や「度数」の話を行ってきましたが、そこが先ず分からないよ!というかたは以下のバナーをタップ・クリックしていただけますと、当サイトの楽譜を読むための基礎知識を段階的に解説している【楽譜を読む編】というシリーズ記事を見ることができますので、そこから学習を深めていただけますと幸いです!

楽典の親カテゴリー画像

この記事が面白い、勉強になったという方は商品を検討していなくても音楽の知識を紹介している記事は他にもたくさんありますので是非他の記事も見ていただければと思います!

本記事の内容は、実際の制作・宅録環境での使用経験や、複数の機材・手法を比較した上での判断をもとにまとめています。環境や目的によって最適解は変わる為、あくまで一つの現実的な指針として参考にして下さい。

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ギタくん(メインライター)

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音楽歴19年。現役で作編曲家として活動中。これまで音楽業界で様々な仕事を経験し、現在はプロの目線から「本当に役立つ情報」を発信するために「PRO,Sound Designチーム」を運営。
自身も「PRO,Sound Designチーム」の中から、特に「機材情報」をピックアップして紹介する当サイトのメインライターも行っています。

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