なぜあのバンドは響くのか?吹奏楽の自由曲を「ホールの残響」と「倍音」から選ぶ新常識

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**この記事は私が19年の音楽制作経験に基づいて、初心者の方の失敗を減らすために執筆しました**

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夏の吹奏楽コンクール・秋のアンサンブルコンテスト・冬のソロコンテスト等、吹奏楽では年に複数回大きな大会がありますが、一番大変なのは練習だけでなく「自由曲選び」もありますよね!

テクニカルな楽曲でバンドの技術の高さを見せれば入賞できるか、はたまた、過去に入賞が多い曲で自分のバンドのオリジナル性を発揮していくか等、悩むポイントは様々です。

筆者はここで、新たに「音響の特性」や「音や音楽のより根本の理論的な部分」で曲を選んでみませんか?という提案をしてみたいと思います。

筆者は音楽業務の中でも特に、作曲・ディレクター・ミックスの分野を得意としていますが、どれだけ良い曲を仕上げたとしても「ミックス(音の調整)」の部分がダメだと、音源を聞いてすらもらえないということは良くあることで、筆者もそのような理由で聴かなかった曲も沢山あります。

つまり、どれだけ良い曲を選定しても「音響的な観点」や「音や音楽の根本的な理論部分」によって「良く聞こえる曲」と「悪く聞こえてしまう曲」があるかもしれないということです。

加えて、この様な観点から自由曲を選定している学校は少ないと思いますので、この観点も含めて「良い自由曲」を選べれば入賞できる期待値も上がるかもしれません....!

勿論生徒やバンドがやりたい曲と言うのは最優先だとして「音響的」「より理論的」な選び方にはどういったものがあるかを、早速見ていきましょう!

1つ目の提案は「課題曲との調性の親和性」から自由曲を選ぶという方法です。

どんな楽曲にも必ず「調(キー)」があり、その中には和声理論の根幹である「トニック(主和音)」「ドミナント(属和音)」「サブドミナント(下属和音)」という機能的な関係性が存在します。

特に「トニック(主和音)」「ドミナント(属和音)」「サブドミナント(下属和音)」は、より深い音楽的な繋がりを得ることができる関係性の為、この理論をコンクール全体の構成に活かし、課題曲の調に対して「同主調」「属調(ドミナント)」「下属調(サブドミナント)」、もしくは「平行調」の関係にある自由曲を選択します。

例えばですが、課題曲が「ハ長調(C dur)」であれば、自由曲には「ト長調(G dur)」「ヘ長調(F dur)」あるいは「イ短調(A moll)」を選ぶといった形です。

あくまで筆者の考えではありますが、この形で自由曲を選ぶことによるメリット・デメリットは以下の様なものです。

メリット
①:自然な音楽的な繋がりから、楽曲が急に変わったという違和感を与えない
②:複雑な変化が起きないため、演奏者側との意思疎通がしやすい
③:近親調は共通する構成音が多い為、ピッチが安定しやすい他、楽器の鳴りを維持しやすい

デメリット
①:課題曲とテンポや曲調が似ていると、退屈な印象を与えてしまう可能性がある
②:「ホールの響き」方を活かしきれない
③:ピッチのずれが違和感に繋がりやすい

この中でも特に重要なのは、メリット③・デメリット②・デメリット③のポイントです。なぜ特に重要なポイントになるかと言う理由を具体的に見ていきましょう。

メリット③:近親調は共通する構成音が多い為、ピッチが安定しやすい他、楽器の鳴りを維持しやすい

例えばですが、特に「C dur」と「A moll」は構成音が「全く同じ」です。

そのため「ピッチの安定感」や「楽器の鳴りによる音の混ざり具合」など、特に気にしなければいけない部分が、課題曲・自由曲両方の練習がそれぞれどちらにも活きてくる、言ってしまえば一石二鳥な状態のため、より深い領域まで洗練することができることが最大のメリットです。

「ドミナント(属和音)」「サブドミナント(下属和音)」調では、基本的に「#・♭」が1つ多くなるだけで、ほとんどの構成音は同じです。

また、並行調とは違い、課題曲の「ドミナント(属和音)」「サブドミナント(下属和音)」の和音は自由曲の終止の和音になるため重要な「キメの和音」も同時に練習することができます。

デメリット②:「ホールの響き」方を活かしきれない

これは後に説明しようと考えていた部分ですが、物体には「固有振動数」があります。テレビでも見たことがあると思いますが、グラスを声で割る方法もこの法則を使ったものです。実はホールでも同じことが起きます。

簡単に言えば、そのホール(場所)によって「響きやすい音」と「響きにくい音」があるということです。

近親調で選ぶ場合、構成音が似通ってしまいますから、ホールの特性でその調が響きにくい調だった場合、自分のバンドの良さを最大限に活かすことができません。

課題曲と自由曲で全然違う調を選べば、どちらかは「すごく鳴りの良い」状態で、審査員の心を惹きつけることができるかもしれないと考えると、少しデメリットになってしまいます。

デメリット③:ピッチのずれが違和感に繋がりやすい

先程、近親調では構成音が似ているため、ピッチや音の鳴りが安定しやすいと説明しました。

その意見は変わらないのですが、逆に、安定しやすいがために微妙な変化に違和感を持たれやすいという側面も持っています。

特に、ピッチは会場の気温や楽器の温度によって少しづつ変化してしまいますので、指揮者や演奏者の技量が試されることになってしまいます。

ホールにも「良く響くホール」と「あんまり響かないホール」がありますよね!

極端に言えば、野外で演奏すると全然音は響きませんし、ホールで演奏するとすごく響きます。この様にホールによっても響き方の違いの特性があります。

「すごく良く響く=残響が残る」場合、細かいパッセージや連符の多い曲を選ぶと、その響きが残ってしまい「濁った響き」に聞こえてしまう側面があります。

この様な「ホールの特性」を無視して選曲すると、せっかくの演奏がホールによってダメになってしまう可能性があるということです。ですので、例えばですが、

・「よく響くホール」の場合: 細かいパッセージや連符の多い曲は避けて、豊かで美しい和音や、伸びやかな旋律ある楽曲を選ぶ

・「あまり響かないホール」の場合: 音の減衰が早い為、響きで勝負する楽曲は避けて、リズム隊が活躍しグルーブが生まれるような楽曲や、連符が多くある技術力が試される楽曲に挑戦する

など「このホールではどういう楽曲が活きてくるかを逆算」して自由曲を選ぶのも1つの方法です。

先程少し触れましたが、物体には必ず「固有振動数」が存在します。簡単に言えば「その物体が最も共鳴しやすい周波数(音)」のことです。

テレビ等でよく見る、声でグラスを割る技は、一度グラスを叩きその音に近い周波数の音を出すことでグラスが共鳴、その共鳴した音がグラス内で反射し、更に強く共鳴し振動が強くなることで最終的に割れる。という原理になっています。

の「固有振動数」による共鳴はグラスだけではなく、勿論ホールでも同じことが起きます。例えば、今までホール練習をしている際に床から「ビリビリ」という音がしたなと感じたことはありませんか?

その現象は固有振動数の性質によって、ホールや床の共鳴が大きくなり、その振動が床についている金属パーツや譜面台等に伝わって、鳴っている音です。ホールの固有振動数の計測の仕方ですが、簡単な方法が2種類ありそれぞれ以下のような形です。

  • 手を叩いて「パン」という噪音が消えた後に「キンッ」と少し残る音に近い音程を探す
  • CメジャーからBメジャーまで12個の和音を演奏してみて、「ビリビリ」と床が鳴る和音を探す

早いパッセージや連符の多い曲では、そもそも、和音や音の移動が多い為この特性は活かしにくいですが、豊かな旋律や和音重視の楽曲を選ぶ場合、この「ホールの得意な音」を活かせる調性の曲を選ぶことで、サウンドの説得力は格段に上がります。

ホールの特性から選ぶ方法を2つ紹介きましたが、実はこれには大きな落とし穴が1つだけあります。

それは、地区予選・県大会・東日本/西日本大会・全国大会等、予選が進むにつれてホールが変わってしまうことです。

地区・県の予選では同じホールを使う場合がありますから、この特性を利用した選曲には意味が出てきますが、もし、東日本/西日本大会・全国大会のホールが地区・県の予選のホールと全く逆の特性を持つホールだった場合、練習した曲の「響きの良さ・技術」等を半減させてしまうということも考えられます。

ですので、この方法は「自分たちがどのステージ(どのホール)を最大の目標にするか」を明確にした上で、一つの重要な判断材料として活用してみてください!

バンド全体で「音が一つに混ざり合った」と感じる瞬間は、言い換えれば、各楽器の「基音」と「倍音」がパズルのように完璧に組み合わさった状態のことを指していることが物理的に確認されています。

ですが、楽器によって「鳴らせる倍音」には大きな違いがあります。 一般的に多くの楽器は全倍音を鳴らすことができますが、吹奏楽の主役級の楽器であるクラリネットは奇数倍音しか鳴らせないと言われています。加えて奇数倍音しか鳴らせない楽器には以下のような特徴があります。

奇数倍音の特性: 悪く言えば「鼻にかかったような音」や「少し浮いた音」に聞こえやすく、他の楽器と馴染ませるには高い技術が必要。

この「倍音の特性」を理解した上で選曲すると、バンドの完成度はさらに高まります。

例えば、クラリネットの演奏者が特に上手な場合は、クラリネットが活きる楽曲と言う選択肢や、

人員が十分で、数名をクラリネットの接着剤として編成を工夫できる場合は、より一体感のある演奏が必要な楽曲等、倍音から見た場合分けで選ぶのも、バンドの良い部分を強調できる選択手段の1つです。

「このバンド、なんだか音がバラバラだな」と感じる原因は、実はこうした物理的な倍音のミスマッチにある場合もあります。自分たちのバンドの「倍音のバランス」を見極めることも、自由曲選びの重要な戦略の1つと言っても過言ではありません。

今までは新しい視点での選曲方法を紹介して来ましたが、こちらは「当たり前だけど見落としやすい」ポイントの1つです。

吹奏楽コンクールの採点方式は「減点方式」を採用しています。つまり最初は全参加団体が100点を持っていて、何かあるたびに減点するということです。

そのため「連符の縦の線を揃えるのが苦手なのに、技術面に挑戦する」ということや「連符の技術力が高く、リズム感を生み出すのが得意なのに、緩やかな旋律や豊かなハーモニーが必要な楽曲で挑戦する」理由はありません。

それは、そのバンドを否定している訳ではなく、勿論前回のコンクールやコンテストより成長している部分もありますから「現時点でこっちの方が得意なのに」という意味です。

また、金管楽器は木管楽器より、高音部では特にシビアなアンブシュアが求められ、そのシビアなアンブシュアは身体的に大きな負荷がかかります。この身体的な負荷が大きい場面が長く続くとなると、どれだけ上手な演奏者でも疲労による細かいミスが増えてきてしまいます。

バンドとして、折角良い形で完成してきたのに、この様な「得意な面」や「身体の疲労によるミス」を考慮しなければ、どんどん減点されてしまいます。

ですので、そのバンドのバンドの技量や耐久力から自由曲を選曲するもの、コンクールを勝ち上がるための重要な要素の1つです。

本記事では、自由曲選びに新しい風を吹き込むべく「音響・音楽理論」という物理的な視点からの選曲戦略を提案してきました。

インターネットの普及により、誰もが良質な情報にアクセスできるようになった現代では、吹奏楽界だけでなく音楽界全体の技術力や知識レベルは、かつてないほど高い水準で「横並び」になりつつあります。

そんな「技術がイーブン」な時代だからこそ、勝敗を分けるのはステレオタイプな選曲から一歩踏み込んだ、根本的なロジックです。

  • ホールの響きを味方につけているか?
  • 楽器の倍音特性を理解しているか?
  • 自分たちの「今の耐久力」を冷静に計算できているか?

など、新しくも根本的な部分から自由曲を選ぶというのもそんな時代だからこそ有効な要素の1つかも知れません。

もちろん、本記事の内容はあくまで筆者の考えですので、そのバンドの演奏者が演奏してみたい曲と言うのは最優先に、悔いのない選曲を行ってください!

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音楽歴19年。現役で作編曲家として活動中。これまで音楽業界で様々な仕事を経験し、現在はプロの目線から「本当に役立つ情報」を発信するために「PRO,Sound Designチーム」を運営。
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